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小説誌、情報誌のデータを集計し、小説家の年収・収入状況を掲載しています。
小説家
平均年収
100万円~300万円程度
トップクラス:数億円
小説家とは
小説家とは小説を執筆し、その原稿料や印税を収入源として生計を立てている人のこと。
出版社から小説を出版せずに独自にウェブで公開したり、自費で出版するアマチュア小説家として活動している人もいます。
どちらも小説家といえますが、一般的には出版社から「本」を発行したことのある作家を小説家と呼びます。
小説家の原稿料・印税・収入状況
小説家の収入には大きく分けて5つの収入があります。
1.原稿料
原稿料とは文芸誌や雑誌の連載などに対して支払われる報酬のことで、一般的に原稿用紙一枚(400字)が単位となっています。
1枚あたりでおおむね2000円位から5000円くらいが平均的ですが、作家の実力と人気次第で契約金額は決められます。
ヒットが約束されるような有名作家ともなると1枚あたり数万円の原稿料になることもあります。
第153回芥川賞を受賞した羽田圭介さんはデビュー直後の原稿料が400字で300円。
経験を積んだ受賞前には4000円まで上がり、受賞後には5000円になったと公表されています。
仮に小説の文芸誌連載が月産枚数50枚であったとしても、月収は25万円にしかなりません。
実力派と言われた羽田さんでもこの金額ですから、小説家の厳しい状況が伺えます。
2.印税
印税とは出版された本1冊に対する収入です。
おおむね10%程度ですが、新人の場合は8%など出版社との契約次第で上下します。
「小説家」としての本収入がこの印税収入で作家の実力で稼ぎ出せる収入です。
一冊1500円の本を印税契約10%として得られる収入
部数 | 印税 |
---|---|
3000部 | 45万円 |
1万部 | 150万円 |
10万部 | 1500万円 |
100万部 | 1億5千万円 |
又吉さんの芥川賞受賞作「火花」など話題性の高い作品やトップクラスの作家なら初版(最初に刷られる部数)で数万部ということもありますが、ほとんどの作家は初版で3000部から数千部程度から始まります。
そこからヒット次第で段階的に増刷となりますが、売れなかった場合はその時点で絶版となります。仮に初版の3000部しか売れなかった場合は印税収入は45万円程度という計算になります。
サラリーマン程度の収入(年収400万円)を担保しようと思えば、年間に3万部は売り切らなくてはなりません。
3万部と言うとそう難しくない数字に思いがちですが、出版不況がいわれる中、数万部をコンスタントに売り上げる事はかなり難しくなっています。
また、小説を年に何本も書き上げることは現実的でなく、余程のヒットを飛ばさない限りは印税から高収入を得ることは難しいでしょう。
最近は単行本(ハードカバー)の数年後に「文庫本」が出版されるケースが増えています。
文庫本とは本を小さく簡素にして安く販売されるもので、不況の影響なのか単行本よりも人気があり、小説家にとっては数年後に新たに得られる収入源として重要な存在になっています。
※1枚400字あたり数千円
↓
連載をまとめ上げたハードカバーの単行本を出版(印税収入)
※売り上げ部数と印税のパーセンテージ契約次第
↓
数年後に文庫本として出版。(印税収入)
※売り上げ部数と印税のパーセンテージ契約次第
※連載などをせずにいきなり単行本として出版するケースもあります。
印税の種類
印税には発行印税と実売印税の2種類存在しています。
契約形態 | 説明 |
---|---|
発行印税 刷部数印税 |
発行した部数※に応じて印税が支払われる。 1000部発行x1000円x印税(10%)=10万円の印税 ※本を作成した数 |
実売印税 売上印税 |
売れた部数に応じて印税が支払われる。 1000部発行(500部販売)x1000円x印税(10%)=5万円の印税 |
発行印税は著者のメリットが大きく、実売印税は出版社のメリットが大きくなります。
ただし、実際には発行印税がほとんどで実売印税を採用している出版社はあまりありません。
増刷の印税と初版の印税が違う場合もある
初版の印税と増刷の印税でパーセンテージが異なる出版社もあります。
増刷の方が高く設定されていることがほとんどで、出版社からの増刷連絡が来ると、小説家は飛び上がって喜びます。
3.電子書籍の印税
本の印税とほとんど内容は同様ですが、現在は電子書籍の販売数が増加傾向にあります。
紙も流通も使用しない分、電子書籍の場合は印税率が普通の書籍よりも高く設定されており、中には20%の印税率になる場合もあります。
小説家としては電子書籍で売れたほうが在庫切れもなく、色々と都合が良いようです。
また、電子書籍はあくまでも電子データであるため、実売計算になります。
※売れた分のみ印税になる。
4.原作使用料など
アニメや映画など映像化された際の使用料も小説家の重要な収入源の1つになります。
ただし、原作使用料は書籍の印税ほどにはならず、概ね数%になることがほとんどです。
※書籍も高いとはいえませんが、、
その程度では、金銭的なメリットが少ないと考えてしまいがちですが、映画やアニメになった場合は原作者として名前が大きく売れるため、後々の小説のセールスに好影響を与えます。
映画やドラマで知名度があがると次回作の印税が増えたり、執筆依頼が増えたりと副産物的なメリットを享受できます。
映画やドラマのヒットにより名前が売れると、その作品だけで一生涯、小説家として生活できるようになることもあります。
5.その他
上記の直接的な収入の他に、知識や知名度を活かした収入が得られることもあります。
知名度を活かした講演活動
「芥川賞受賞」「文藝賞受賞」など一定水準の受賞者ならば、学校や企業から講演依頼が来ることがあります。
「文章の魅力的な書き方」や「受賞までの困難に打ち勝つプロセス」など学校や企業が求める内容に応じて講演を行います。
講演料は様々でボランティアに近いものから、1回100万円を超えるものまで様々です。
テレビやラジオのコメンテーターやタレント活動
芥川賞や直木賞、各賞の最年少受賞など派手な経歴を持つ人にはテレビやラジオの出演依頼が殺到します。
小説家の独特の感性はテレビ受けがよく、それをきっかけにタレント活動に重点を移す作家もいます。
テレビの出演料は文化人扱いとなるため概ね5万円から10万円程度。
※東京キー局の場合。番組次第。
講師・ワークショップなど
ライター系、アニメ系などの学校で小説やシナリオの講師として働いている小説家も少なくありません。
趣味と実益を兼ねている職業で、小説家の理想的な働き方といえます。
新しい収入源
今までは上記の5つ、とりわけ原稿料と印税が小説家の収入源となっていましたが、インターネットの普及とともに新しい収入源がいくつも生まれてきています。
ファンへの直接サービス
インスタライブなどの投げ銭機能のあるシステムを利用して、ファンの質問に答えたり、悩み相談に乗るなど交流を通じて収入を得ている小説家もいます。
ファンは憧れの小説家と直接コンタクトを取ることができ、作家はファンとの絆を強くすることで収入が得られ、更により強固な関係を築くことができるという夢のようなサービスといえます。
オンラインサロン
小説家志望者やファンに対してオンラインサロンを開設している作家もいます。
低額であったり無料であったりと金額設定は様々ですが、プロの指導を仰ぎたい志望者は多く、何百人もの参加者がいるサロンもあります。
100人も集まればそれなりの金額になり、オンラインサロン一本でも生活をすることが可能になります。
定額読み放題サービス
「Kindle Unlimited」のような定額読み放題サービスに小説を公開し、読まれた量に応じて収入を得る事もできるようになりました。
無名作家の小説を購入してもらうのは、1冊1000円だとしても、なかなか高いハードルです。
kindle unlimitedは読み放題でファンを増やしながら収入も得られる一石二鳥ともいえるサービスです。
無名時代はまず「読み放題サービスから」という人も少なくありません。
小説家の平均年収
小説家の平均年収は東野圭吾さんや湊かなえさん、宮部みゆきさんなどのトップクラス・売れっ子の作家で数千万円から数億円。
小説家としてコンスタントに本を出せるレベルで、おおむね平均年収100万円から300万円程度だと予想されます。
この年収では安定的な生活を送ることは難しく、本当のトップクラスになるか兼業として活動する以外は「喰えない職業」といえるでしょう。
小説の印税・執筆料だけで生計を立てている、食べていける「専業作家」はトップクラスの一握りを除けばほとんど存在していません。
現役小説家として活躍している林真理子さんはテレビ番組出演時に
印税と原稿料だけで食べていけるのは日本に50人程度。
と発言されています。
実際の肌感覚としての数字を発表されたのかと思われますが、これが現実なのでしょう。
また、この場合の「食べていける」の意味は、単に収入を得られるという意味ではなく、家族を養い、安定して生活ができる水準の話だと思われます。
兼業作家と専業作家
「文芸賞」などの各種新人賞、日本一有名な「芥川賞」「直木賞」の受賞者でさえもほとんどは別の仕事を持ちながら活動しています。
会社員や介護職など文筆業とは関係のない仕事をする人もいれば、タレントやコメンテーター、コラムニスト、エッセイストとして活躍する人など様々です。
小説家と兼業・又吉直樹(第153回芥川賞)お笑い芸人
・瀬尾まいこ(吉川英治文学新人賞など)中学校国語教諭との兼業 ※現在は専業作家
・津村記久子(第140回芥川賞など)会社員との兼業 ※現在は専業作家
・西加奈子(第152回直木賞など)エッセイストなど
・石田衣良(第129回直木賞など)タレント・コメンテーターなど
・羽田 圭介(第153回芥川賞)コメンテーターなど
また、専業作家といっても高収入を得て悠々自適な生活が送れる人はごくごく僅かで、多くの人は少ない収入でも小説に集中するために頑張っていたり、配偶者のサポートがあってこそのケースがほとんどです。
よほどのヒットメーカーでない限り、専業だとしてもサラリーマンの平均年収程度(400万円~500万円)が関の山だといいます。
小説家で年収1000万円
小説だけで年収1000万円を実現させようとすると、年に10万部程度は実績を積み上げる必要があります。
単発で10万部なら可能性はそれなりにありますが、3万部売れれば「ヒット」と言われる中、毎年それを連発する事はかなりの難易度。
年に何本も発表できる作家自体が一握りですから、本当のトップクラス以外はまず不可能な年収といえます。
世界の作家年収ランキング
経済誌「フォーブス」が2015年に発表した作家の年収ランキングによると
※厳密には小説限定ではない。
1位 ジェームズ・パターソン(68歳)
8900万ドル(約98億円)
「アレックス・クロス」や「ウィメンズ・マーダー・クラブ」などのシリーズで有名。
2位 ジョン・グリーン(37歳)
2600万ドル (約28億円)
「さよならを待つふたりのために(The Fault in Our Stars)」は数百万冊の大ヒット。
3位 ヴェロニカ・ロス(26歳)
2500万ドル (約27億円)
「ダイバージェント」シリーズで有名。
4位 ダニエル・スティール(67歳)
2500万ドル (約27億円)
ロマンス系作品を中心に長年にわたり活躍している。
5位 ジェフ・キニー(44歳)
2300万ドル (約25億円)
児童向け書籍「グレッグのダメ日記」で有名。
作品が世界各地で翻訳されている。
近年での日本のトップはヒットを連発している東野圭吾さんや重鎮の村上春樹さんあたりだと予想されますが、おそらく年収で数億円程度でしょう。
マーケットの大きい世界に目を移せば、トップクラスで日本ではまず考えられない20億円以上の収入になります。
現在のランキングには入っていませんが、爆発的に大ヒットした「ハリーポッター」の作者J・K・ローリングさんは2002年には作家としての史上最高額「1億2500万ポンド(180億円)」の年収を記録しました。
ハリーポッターの出版前は極度の困窮状態で自殺を考えるほどであったそうですが、現在は1000億円を超えるともいわれる総資産をもとに悠々自適な生活を営んでいるそうです。
スポーツや音楽業界同様に小説界にも日本と世界には大きな格差が存在しています。
日本最高の権威である直木賞や芥川賞を受賞しても「喰えない」日本の小説業界を飛び出して、「世界」に向けて発信することがブレイクスルー、あるいはこれからのスタンダードになるのかもしれません。
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